4日目-波照間

今日も8時くらいに起きて朝食。最後に庭をてくてく歩き回ってから送迎のワゴン車で
港へ。途中畑のあいだの道を通っている時、道路の真中にカメが横断しているのに出くわした。
親切に車を止めてくれたので、急いで降りて捕まえてみる。

天然記念物のセマルハコガメ。普通のカメと違って、手足を引っ込めた後甲羅の下側が
上に跳ね上がってパタっと閉まる、まさしく箱ガメ。そんなに厳重に防御しているくせに
掴んでいる間にも手足を伸ばして逃げようとする横着なやつでもあった。
(もちろん島内からは持ち出し禁止だけど、闇では相当高額で取引されることもあるらしい。
そういう節操のないコレクターは嫌い。ルールの中でやって欲しいもんですね。)
最後まで素敵な体験をさせてくれる島だなぁ!

船が来るまで待合所で待っていると今日のツアー客を迎えに来ているネイチャーと会う。
また来ますと、社交辞令ではなく本心から伝えて船に乗る。今回は船尾のベンチに
乗ってみたけれど、振動と音が凄すぎて話すのも難しい感じ。
石垣の港が見えた時はかなりホッとしたというか、酔う寸前で助かった。


波照間行きの切符を買いに行くと、荷物を置いている間に11時の便の切符を買われてしまう。
仕方なく次の切符を買おうとするとおばちゃんに止められた。実は台風13号が直撃コースで
向かって来ているのは知っていたのだけど、やはり波照間で閉じ込められるとシャレに
ならないから日帰りにしな、と強く言われる。一応今日最後の便が出る前までに、
翌日運行するかしないかを携帯に連絡をくれるようお願いして切符売り場を出る。



しばらく離島桟橋の近くの商店街の入り口にある喫茶店で時間つぶし。
これはその時注文したシーサー最中。彼女はかわいいとかなり喜んでたけど、そこまでか?


船はかなりの波を乗り越えて1時間と少し。波照間につくとゲストハウス波の主人が
迎えてくれた。同じ船に乗って来た女の子も合流して宿に向かう。所々の目印を教えて
くれたけど、後々迷いまくることになる。


宿に着くと、台風を考えて2泊の予定を一泊にした時に誤解が生じたのか、
キャンセル扱いな感じになっていたらしく、相部屋になっていて、彼女は一緒に宿に来た
コと同じ部屋に、僕は他のグループの男子と同じまぐろの部屋に泊まることに。


外の大きなテーブルで宿帳を書いていると、宿の漁師のオジィが、「刺身食べる?」
といって取れたてだというまぐろとカツオをお皿いっぱいにくれる。


オジィは日焼けして長年潮風にあたって来た、まさしく漁師という顔をしているんだけど、
表情がなんとも不思議な感じに優しい人で、刺身の美味しい食べ方を教えてくれた。
醤油に酢を入れな、というから僕ら3人は半信半疑でいたんだけど、これが美味しくて、
さらにワサビ、そしてオジィが近くの畑から取って来てくれた島とうがらしとニラ。
もうほぼ餃子みたいな感じなんだけど。箸がすすんで、平らげてしまった。


やっぱり話は台風のことになり、同室のコは飛行機を早めてさっさと沖縄から脱出することに
したという。詳しく聞くと、台風という理由があれば格安航空券でも予約を変更できるらしい。
それではと空港に電話するも繋がらないので、ニシ浜ビーチに行くことにする。


sun輪舎というレンタサイクル屋に自転車を借りて、石を積んだ石垣のある家々の間を
通って、サトウキビ畑のある坂を下っていくとその先は海。ベタな写真も取りたくなる。


真っ白な浜と青い海でしばらく遊んでから、ちょうどいい木陰でまたヤドカリと遊ぶ。
一匹蟻んこにたかられながら歩いてるのがいたので、海に入れてあげる。蟻には悪いことした。
船の最終便を意識しはじめる時間になって、石垣の切符売り場のおばさんから電話が
かかってきた。明日の第1便は出る事になったけど、天候しだいで変わるから、
この船で帰った方がいいよ、との事だったけど、これから宿に戻って事情を話して
引きあげるにはあまりに勿体無いので、お礼を言ってから電話を切った。


海から上がって、ホントは波照間にきたら最初に行きたかった、船客待合所の中の
カウンターのみの食堂、海野(いーのー)にいく。クーラーもなく、西日が差し込む建物の
中は少しけだるい空気が漂っていた。お土産物屋を見るとさっそく波照間産泡盛「泡波」の
ミニボトルと黒糖がセットで並んでいる。ここで買うのはは最後の手段にしようと思いつつ、
建物内を見渡すと、端にベニヤで仕切られた船の切符売り場、クマノミが泳いでる
小さい水槽、畳敷きの休憩場が目に入る。なんだかココだけの独特な空気が流れている。



カウンターで島そばと泡波を頼むと、涼しいからと外で食べるよう勧められた。
泡波を飲みながらそばを食べていると、汗が吹き出してくる。泡波は喉にさらりと
した非常に飲みやすい泡盛ですいすいと飲めてしまう。コーレーグスも泡波で
作っているのかな。途中からコーレーグスで味を変えて食べるのが好き。


器を戻しに行くと畳の上にかわいらしい男の赤ん坊が寝ているの気付いた。なんで
さっきは気付かなかったんだろう。その子の周りにはおもちゃとほ乳瓶、乳母車がおいてある。
どうやら海野のおばさんの子らしい。この少しけだるい待合所に、子守りをしながら
働いているお母さんがいるのを見て、なんだかすごく懐かしい情景を見たような、
日々を子供に注ぐ母親の健気さを見たような、少しだけ物悲しいような気持ちになった。


待合所を出ると、彼女のお目当てだった、パナヌファというカフェを探すことにする。
sun輪舎のチャリ籠に入っている地図を見て、風力発電の風車を目印に行ったり来たり
してもなかなか見つからず、万屋に行き当たると入っては泡波が置いてあるかチェック
する。結構な時間ぐるぐるしていると、通っていない道に行きついて、そこにあった万屋
に入ってみると泡波の大きいボトルとミニボトルがいっぱい!大きいのは一人一本で
小さいのは何本でも買っていいらしい。それぞれ一本ずつ買うと、ぐるぐる回った疲れも
ふっとんだ。迷ったおかげで買えたので彼女には感謝。駐輪していたチャリを取りに戻ると、
結構な歳だと思われるオバァに「ニィニィ○×□○×□○×□○×□」と言われて、
もう一回聞くと、どうやら、お兄さんちょっと自転車どけてくれる?という事らしい。
ここまでくると波照間語といった感じで、ほぼ異国の言葉に近い。


しばらく走って、やっとパナヌファに到着。でも定休日で閉まっていた。実は水曜日が
定休日ということは知っていたんだけど、高山なおみファンである彼女のたっての希望で
探していたのだった。早速記念撮影。彼女はこの店に来る時に着ようと思っていた
ワンピースを着てきていた。しかし残念な気分が現れすぎなシルエットになってるなぁ。


予定は一通り済ませたので、チャリで集落の中を走っていると、オバァに話し掛けられた。
もう見たい場所は行ったかい?こんな遠い所まで来ただけで十分なんだから、ここに留まらずに
早く家族の元に帰ってあげな。ほんとに家族は大切だよ。うちのおとうさん(夫)はとても
頼りになるけど、いつも「お前は分かってないのに口出すな」って叱られる。それで口げんか
するんだけど、それも楽しいものだよ。早く帰って家族を安心させたあげな。と。
台風が間近に迫っていて、観光で来た僕らがここに閉じ込められる事を心配してくれていた。
そこには台風と暮らすのは自分達の役目とでもいうような責任感みたいな感情も含まれていた
ような気がして、とても印象に残っている。


宿に帰ると相部屋の相手と初顔合わせ。あちらは関西の若いグループで挨拶もそこそこに
シャワーを浴びる。しばらくすると「ごはんだよー」と外のテーブルに呼ばれる。
ここは素泊まりなんだけど、オジィの釣ってくる魚と、豆腐屋をやっているだけに
島豆腐を無料で出してくれる。オプションでおにぎりセットを頼んでいたので、
それとお豆腐、刺身&オリオンで満腹に。この日の宿客は、沖縄特有のゆんたく(宴会)
で盛り上がるというのを期待しているわけでもないらしく、人見知りな僕らには
丁度いいテンション。彼女が風呂に入りに行ってしばらくすると、皆で南にある
星空観測タワーに行こうという流れになり、行ってしまった。僕はチャリンコでも
行けるだろうとタカを括っていたのだけど、オーナーに聞いてみると、みんな迷うから
止めたほうがいいといわれ断念。


風呂から戻った彼女と、宿からしばらく畑の間を歩いて夜空を見に行くことにする。
コート盛りという石を積んで作られた見張り台の上で見ようと思っていたけど
先客がいたので、道の真中で上を向いて夜空を見る。
信じられない数の星がびっしりと空を覆っていて、天の川がくっきりと空を横断している。
時たま流れ星がすーっと落ちる。彼方の水平線には雷のフラッシュがかすかに瞬いている。
初めて見る夜空の本来の姿は本当に綺麗で広大だった。東京もガスとか埃の覆いを払って、
町の電気を消せば同じだけの星が見えるとは少し信じられない。


宿に戻って、外のテーブルでビールを飲んでいると、すぐに缶のしたに出来た輪に
沿って小さい蟻がたかり始めた。本当にここは蟻と蝿が多い。あんまり気にしない
でいると結構なれるものだけど、さすがに4畳ほどの部屋に大きい蝿が3匹
入り込んで来た時は、五月蝿くて眠れないかった。ベテランのバッターになった
気分で、飛んで来た所をタオルで打ち落として全て打ち取ってから就寝。
結局空港の電話にはつながらないままなので、少し不安だけど。

【ゲストハウス nami波】
□HP http://www7a.biglobe.ne.jp/~kanamaru/nami.html
□TEL 0980-85-8203
□料金 一泊2500円素泊まり(刺身&豆腐付き)

【海野 いーのー】
□営業時間 8:00〜18:00(食事は11:00〜17:00)
□場所 波照間船客待合所内
□定休日 月曜日
□TEL 0980-85-8325