ygi2005-07-16


家の近くに、風景にそっと馴染んでるのにずしりとした存在感があって、そこを通るたびに
思わず立ち止まって見上げてしまうような凛としたようなお屋敷があります。


そこの庭木は季節ごとに彩りを変えて目を楽しませてくれて、
夏には急な坂道をのぼってきた人に、気持ちのよい木陰を提供してくれていました。
僕もそこを通るときは、そのお屋敷に目を向けながら坂道をのぼるんですけど、
先日その坂(タモリのTOKYO坂道美学入門にものってる)をのぼっていて、
いつものようにお屋敷に目をむけると、なんたることか大部分が取り壊されて
今までは知りたくても知れない謎のようだった家の内部を外界にさらさしていました。


以前の塀に囲まれてそこにあった時の、おごそかで霊的といってもいい雰囲気は重機に
蹂躙されてすっかり消え去ってしまっていました。どうやら全て更地にしてマンションに
されるらしい。春先には素晴らしい折り重なる緑の葉を誇っていた楓なんかも
切り倒されてしまうのかと思うと、残念でしかたない。
日本家屋は現在のマンションに比べて住む人にとっては色々な面で効率的では無いものだけど、
新築された家、ましてやマンションなんかではいくら歳を重ねても身に付け得ない
気のようなものがあの屋敷にはあったし、それはあの一帯を打ち水したように
ひんやりとした心地のよい場にしていました。


これからあそこにどんなマンションが出来ようとも、今まで感じていた
ほっとするような気持ちには慣れないだろうし、好きにもなれないんだろうなぁ。