ygi2005-02-26


朝から見舞いに行くと、昨日より熱は下がっていた。息も少し安定している。僕達を見る目にも
認識の色がうかがえる。ただ口の中は渇ききっている。看護婦にどうにかならないか?とたずねると、
水に濡らせた脱脂綿で口の周りをぐいぐいと拭く。祖母が嫌がっているのがわかる。そして脱脂綿を
口の中にぐいっと入れてしまった。祖母の手がビクッとしたのが伝わる。くちびるが渇ききっていたのに
無理に開けたから端っこが切れてしまって血が出ていた。看護婦はお構いなしだったが、あの時の
祖母の屈辱と怒りの色にはドキリとさせられた。でも同時に少し安心させられた。気力を垣間見れたからだ。


弟が生まれたばかりの娘の写真を現像してきて祖母に見せてやっていると、まだ動く左の手で
写真を掴んで自分で見ようとする。
生まれてすぐの娘を撮ったビデオもテレビとデッキを持ってきて、見せてあげると言葉にならない
微かな呻きでなにかを伝えようとする。教育に携わっていた人が喋れなくなるというのが、
どれだけもどかしく悔しいものかと思う。でも、家族の力はすごい。本当に。
あと、衰弱しきった祖母相手に娘自慢をする弟にもリスペクト。よくやってくれていた。


病院を出た後、近くのだいこん舎という越前蕎麦屋で食事。小さい座敷に座る。無垢材をふんだんに
つかった洒落た内装。地元の人が多いというのは美味しい証拠かな。みんな蕎麦にはうるさいからね。
うちの実家の年越し蕎麦は固めの蕎麦の上に花鰹がもりもりに乗っていて、そこに辛み大根のおろしと
つゆをぶっかけて食べるというもので、これが何杯でも食べたくなる位美味しい。


で、頼んだのは、ざる、わさび、鬼おろし、おろし、とろろ、蕎麦がきの6品。鬼おろしが
先に書いたぶっかけの蕎麦。これとわさびは20食しか出ない粗挽太打ちにした。素朴な歯応えがいい。
わさびの、辛いんだけど甘味もある味もたまらない。少し量が少ないから3人で丁度の量。
最後に出てきた蕎麦がきがまたもちもちとしていて、とても美味しい。


満足したと同時に、水も飲めない祖母になんとなく悪いなぁ、と思うのだった。