高速道路から
両親の実家が50M位しか離れていないので、僕の田舎は
福井の鯖江、一つしかない。
福井に帰るには、首都高から中央道か東名にのって
7時間ほどかけて帰るのだけど、首都高から見える、
すぐそばに林立するマンションや、ビルのくすんだ窓から
見える生活の風景に、小さい頃から妙に心惹かれていた。
窓際まで書類が積まれて、雪崩になっているごく小さな
オフィスや、ヤニっぽく黄ばんだ窓を通って黄色くなった光に
満たされた、がらんとした借り手のつかない空き部屋、
ガスで煤けたベランダの窓にのぞくよれたカーテン。
そういう風景を見るのが大好きで、今でもそれは変わらない。
十数年前まで一番楽しみだったのが、九段会館の前あたりにあった、
巨大な真っ黒く劣化したコンクリートの固まりで出来た廃墟のような
アパートを、上から通り過ぎながら眺めることで、人が住めるような
状態では無いように見えるのに、屋上には洗濯物がひらひらと
干してあったりするのが、なにより嬉しかった。
一回でいいから中に入ってみたかったと、今でも思ったりする。
新しい物も古い物も、朝の高速から排気ガスを通してみると
等価値に、見えるのが好きなのかもしれない。
これからも首都高から東京を見て、ヒトの生活をかいま見て
行きたいと思う。もちろん父か弟の運転する車にのって。
そうそう、僕のこんな覗き趣味をとても満足させてくれる本があって、
それはもう10年以上前の都築響一の写真集「TOKYO STYLE」。
この本をめくると、ミニマルなデザイン住宅とは全く対極の、
人間が染みこんだ部屋の有り様に、なんとも言えない安心感を覚える。